Brand X – Masques(1978)

John Goodsall の訃報に遅ればせながら接し、Brand X の全アルバムレビューをしようかと思ったのだけれども、なかなか筆が進まない。
スタジオ3作目、Live版(Livestock)を含めればアルバム4作目となる Masques を取り上げる。
Phil Collins を入り口として Brand X のファンになった方も多いと聞くが、その方々にとっては Phil が参加していない本作の重要性は一段低いのかな。
僕にとっては、高校同級の友人(僕にとって洋楽の師匠みたいな存在)にリアルタイムで本作をダビングして聴かせてもらってから、LP・CDと買い直してずっと聴き続けている、既に自身の血肉となっているような作品。
まず参加メンバーであるが、Percy Jones(b) / Chuck Burgi(ds) / John Goodsall(g) / Peter Robinson(kbd) / Morris Pert(perc) の5名。
Phil Collins は本業(?)の Genesis が忙しくなってしまい(みんな抜けて3人になってしまったのね)、その代わりに参加した Chuck Burgi は Phil 程のバカテクドラマーでは無いのだけれど、まあ十分に上手い。本作参加後あまり名前を聞かないので調べてみたら、Blue Oyster Cult に参加(Heaven Forbid(1998) 他)したりしていて、なんとうちのライブラリにもあった。ドラム叩きながら歌っているよ。
Peter Robinson は、やはり色々と忙しくなって Producer 業に専念することにした Robin Lumley の代わりに参加。シンセのサウンドとか素晴らしいぞ。
Morris Pert は前作 Moroccan Roll から参加。作曲面での貢献も大。本作では Tr.3 で素敵なエレピ演奏まで披露している。
残る2名、Percy と John が Brand X の骨格。だから他が全員チェンジしても Brand X が Brand X であり続けられるのだ。
(プロデュースにまわった Robin Lumley を含めて3人が骨格だったと言っても良いだろう)

Tr.1 The Poke
John の書いたロックっぽいリフ中心の曲。
タイトなドラミングが頑張っていて Phil なのかと思ってしまう程なのだが、聴き比べるとタイム感が異なる。Phil はほぼジャストに叩くが、Chuck は少しだけタメて叩く感じ。なので、オカズのタム回しのところ等、ちょっと重く感じる。まあそれも巧拙ではなくて個性だね。
あと Percy が変態フレーズを弾かず、普通に伴奏しているのがやけに新鮮。

Tr.2 Masques
Percy 作のエキゾチックな曲。
フレットレスベース、ピアノ、パーカッションによる対話みたいな作品なのだけど、まあほぼベースソロ。John はお休み。
3分強の短い曲だが、Percy の繰り出す異界の音世界に魅了される。

Tr.3 Black Moon
Morris Pert 作の素敵カワイイ曲。
もう何だろうねこのカワイさ。
Morris 自身が弾いているエレピも素晴らしくチャーミングだし、上空を飛行する涼やかな Peter のシンセ音も気持ち良し。
John はアコギでオシャレなサウンドをトッピング。
でも Percy のドヨヨンとしたフレットレスベースが鳴り響くので、やっぱりこれは Brand X なのだ。

Tr.4 Deadly Nightshade
この曲も続いて Morris の作。
エキゾチックでロマンチック、10分を超える緻密な構成の大作。
4:44頃からの John のギターソロが、奏法・音色含めて途轍もなくかっこよろし。
6:37頃から曲が変転し盛り上がり、そこから一度クールダウンさせて(ここの発想が凄い)から、8:00頃から本曲の長い終章に入る。
タメて思い入れたっぷりに John が弾くテーマ、後ろで煽る Percy のフレットレスベース、9:53頃に終わったかと思わせてサウンドスケープに突入。夜の帳が降りた後の情景だろうか。

Tr.5 Earth Dance
これも Morris の曲。
ちょっとラテン風味を感じるリズミカルな作品。
Chuck Burgi のドラミングは本アルバム全体を通してとてもとても健闘していると思うのだが、この曲ではタイム感のタメがもたりに感じられてちょっとだけ残念。この曲だけは Phil が叩いたらどうなっていたかなあと思ってしまう。

Tr.6 Access to Data
John の曲。
ギターのカッティングがとてもきれい。
1:44頃のハーモニクスを使ったベースのオカズが印象的。
そして2:50頃から John のソロ。Allan Holdsworth や John Etheridge と並び評される Jazz Rock 界の至宝のサウンド。

Tr.7 The Ghost of Mayfield Lodge
アルバムの最後は Percy によるスリリングな曲。
詳細は不明だが、Percy が借りて住んだモーターホーム(自動車で牽引する居住用トレーラー)が呪われていて(!)、そこで遭遇した怪談話に基づいた曲とのこと。
と言っても詞が無いインストなので、結局のところ何があったのかさっぱりわからん。
Percy は異界の音を鳴らしてばかりいるので、そういうのも呼び寄せてしまうんだろうな、きっと。
4:13頃、さあ異界のベースソロ登場。実際にこんな音を鳴らしながら幽霊が登場したらきっと怖いぞ。
5:30頃から幽霊のダンス(?)が始まる。ちょっとユーモラス。
その後メインテーマに戻って、ここで終わりかと思いきや、内省的なエンディングパートになる。そして1分くらい長く時間をかけて静々とフェードアウトしていくのが面白い。
不思議な余韻が残る印象的な曲。幽霊話だけにね。

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