オランダのバカテクギタリスト Richard Hallebeek のソロ2作目。オリジナルリリースは 2004 年だが、マイナーレーベルからの発売だったので入手困難。2014年にリマスター版が発売されて比較的容易に入手できるようになった。
こういうマニアックなジャンルのCDは、見つけたらすぐに捕獲しておかないと、すぐ廃盤・再発無しになって延々と中古屋を漁る羽目になるというのが従来のパターンだったが、最近はミュージシャン本人がWebでCDを販売していたり、ダウンロード販売サイトが増えてきたりしたので、入手性がかなり改善されたよね。
さて本作の参加ミュージシャンは、Richard Hallebeek(g) / Brett Garsed(g) / Shawn Lane(g) / Udo Pannekeet(b) / Sebastiaan Cornelissen(ds) / Lalle Larsson(kbd) といった凄腕の皆様。
Brett Garsed(g) はオーストラリア出身のバカテクギタリスト。ウルトラレガートな速弾きから、スムーズなボトルネック奏法、更にはピックと中指・薬指の指弾きを併用したトリッキーな奏法まで技の幅が広い芸達者。そして音色がとにかく素敵だ。
そして本作最大の目玉ゲストであらせられる Shawn Lane(g)、病気で亡くなってしまったが、リリースされた作品では本作が最後の参加作になるらしい。いわゆるシュレッディング系ギタリストとして無茶苦茶高速かつ精密な速弾きが有名だったけど、それだけの人では無い。音楽理論を徹底的に学んだ理論派で、更にピアノまで上手い。
Udo Pannekeet(b) は良く知らないのだけど、Sebasiaan と共に Isotope というバンドをやっていた模様。また本作制作より後になるが、オランダの名門老舗ロックバンド Focus に参加した模様。大昔、「ろいよろ、ろいよろ、ろっぽっぽ~」のヨーデルロックで世界的に有名になった人達ね。
Sebastiaan Cornelissen(ds) は Richard と同じオランダ人のバカテクドラマー。共演歴多し。
Lalle Larsson(kbd) はスウェーデンのプログレ鍵盤楽器奏者。自身のソロ作もいっぱい出しているが、スウェーデンということで TFK 関係とのコラボも多く、また地理的に北欧とオランダは関係深いので、こうやってオランダ方面のプレーヤーとのコラボも多い。なお、この人の名前はとかくミススペルされやすい。アルバムジャケットにもデカデカと “lale larson” と大間違いなスペルで書かれてしまっているし、Richard のホームページ内のCD紹介ページでも “lalle larson” と、まあ少しだけ直ってはいるが未だに間違っている始末。かわいそうだよん。
あー、またまた余計な話で長くなってしまった。
本作の音楽性を簡単に書いてしまうと、Tribal Tech 的なハイテクフュージョン。
Hallebeek と言うと、Allan Holdsworth フォロワーとして有名だが、本作ではむしろスコヘン風の軽快なフュージョンが多い。豪華絢爛ゲスト参加で盛り上がる RHP II(2012) よりも血圧を上げずに聴けるのでオススメ。
Tr.1 Prescription Strength
ね、初期の Tribal Tech 風でしょ?
ゲスト g は、Shawn と Brett の両名参加。
空間を上手に残したリズム隊の演奏の上で、まずは Lalle の正統派テックフュージョン風シンセ。
続いて、Shawn の幽玄なソロ。この人は、ハイテクからインド方面へ行って、本作時点ではもう悟りの境地に解脱しているな。
Tr.2 Lined Out
Allan Holdsworth のコードソロ風の荘厳なイントロ。ギターとキーボードで弾いているのだろう。
ゲスト g は Brett のみ参加。
バンドが入ってきてすぐにギターソロ。アタック抑えめのきれいな音色で粘っこいフレーズ。音色からは Brett だろうと思うのだが、どっちだろう。
Tr.3 Canoga Park
これもテックフュージョン王道の曲調。ゆったりと楽しい曲。
ゲスト g は Shawn のみ参加。
テーマ、美しい b ソロに続いて、Shawn の幽玄だけどえらく短いソロ。もうアレね、武芸者も若い頃はいたずらに多く技を繰り出すが、達人になるとほとんど動かず、これぞというところで破壊的な技を一発出してくるという、まあそんな感じか。
3:16頃から Richard がレガートなソロ。美しくまとめて終わる。
Tr.4 Good Food
これはなかなかキャッチーな佳曲。
ゲスト g は Brett のみ参加。
Lalle の活躍が目立つな。本作全体を通して彼の存在感抜群。
2:10頃から Brett のソロ。特徴的な音色から何とか区別が付く感じ。
3:14頃から今度は Richard の返礼ソロ。もうギターの上手さでは両者同等、天上界の対決。(別に対決はしていないが)
2人のタイプが比較的似ているので、フレージングも良く似ているが、無理に違いを言えば、Brett はタメを効かせて緩急付けるのが上手で音色は粘っこい(中域強調)、Richard は畳み掛ける高速プレイに味があり音色はやや高域強調というところ。
Tr.5 Free
ゆったりとセッション風の曲。これはクラブでライブで聴きたいなあ。
テーマの後、0:53頃からそのまま最初の g ソロ。これは Shawn かな。スコヘン風の色っぽいフレーズから、次第にスピードを上げていき、2:10頃目が覚めるようなスピードと抜群の音色コントロールで若干スタッカート気味(これが難しい)なパッセージで締める。超人技。神。
Lalle のソロを挟んで、4:33頃今度は Richard かな。余裕を残したソロ。
Tr.6 Axe
ゲスト g 無し。
この曲はモロ Allan Holdsworth 風だ。そういえば Allan 師匠は一頃 Synth-Axe なる飛び道具(特殊なギター型シンセ)を愛用していたなあ。
Tr.9 Imagine
ゲスト g 無し。
Tribal Tech 風、加えて Weather 風味もあり。従って Lalle が大活躍。
アコーディオンかハーモニカみたいな音のシンセでソロを奏でるのだが、フレージングがまるでギタリストなので、もしかすると Richard がギターシンセで弾いているのかも。
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