
来月(2026年7月)早々に来日して Bluenote Tokyo でライブを行う予定なので、やや慌てて新譜をレビュー。
今や貴重な存在となった Jazz Rock Fusion の御本尊・守り神・生き神様・大明神的な Simon Phillips が続けている御長寿プロジェクト Protocol の最新版だ。
メンバーは、
Simon Phillips(ds) / Ernest Tibbs(b) / Alex Sill(g) / Otmaro Ruiz(kbd) / Phillip Whack(sax)
と前作とほぼ同じだが、saxだけ交替した。
本作のレビューに入る前に、この Protocol というプロジェクトについて少しだけ(いや長くなりそう^^;)書く。
(あんまり研究していないのでそれほど詳しいことは知らないよん)
Protol と題する最初の作品がリリースされたのは1988年。
このときは Simon の個人プロジェクト・・・というより、彼が一人で全曲を書いて、全ての楽器を全部一人で演奏し、しかもミックスダウン等も全て自分でやっちゃうみたいな宅録的作品だった。(宅録的といっても音質もミックスも全て素晴らしいプロの仕上がりだ)
恐らく我が国で Simon Phillips の名前が知れ渡ったのは、Jeff Beck の There and Back(1980) への参加からじゃないかと思うのだが、その少し後にひっそり?作られたのが最初の Protocol だった。
そしてそこから何と25年の歳月が流れ、誰も最初の Protocol のことなんか忘れちまった頃になって出してきたのが Protocol II(2013) なのだ。びっくりだね~。
この Protocol II では Simon はドラム(とミックス)に徹し、他のパートはそれぞれ名手に任せている。
このときに既に Ernest Tibbs(b) が参加しており、そこからずーっと Protocol プロジェクトの屋台骨を支え続けているのも凄いね~。
続く Protocol III(2015) は II と同じメンバー編成でキープコンセプト。
その次の Protocol IV(2017) では、g を Andy Timmons から Greg Howe に換え、kbd を Steve Weingart から Dennis Hamm に換えてより Tech Fusion な方向へ。
次の Protocol V(2022) は、前作から少し間が空いた分だけ素晴らしい仕上がり。
g が Alex Sill に、kbd が Otmaro Ruiz に、そして Sax のJacob Scesney が参加し、前作よりも少し Jazz 側にシフトしたというか、誤解を恐れずに書くと最近再評価されまくっている Japane Fusion 的なフォーマットになったのが面白い。
そして本作 Protocol 6 だが、何故かアルバムタイトルがローマ数字ではなくアラビア数字になった。
単に面倒になったのかもね~。
作風としては前作からのキープコンセプト。
プロジェクトに関しては以上のような時系列なんだが、その音楽性を乱暴にまとめると、古くは Mahavishnu Orchestra とか Billy Cobham あたりがやっていた Jazz Rock Fusion のエッセンス(要するにカッコよさ)を Jan Hammer が Jeff Beck の There and Back に持ち込み、これにモロに感化された若き日の Simon が生涯を通じてその路線を徹底的に洗練してきたということじゃないかと感じている。
なので、Protocol の諸作においては特にギタリストが重要で、Andy Timmons 、Greg Howe、Alex Sill とまあ何となく Jeff Beck リスペクトな人達が選ばれている気がする。
またキーボーディストの Derek Sherinian は自他ともに認める熱烈な Jeff Beck ファンなんだが、彼のソロアルバム(Oceana(2011) とか The Phoenix(2020) とか Vortex(2026) とか)を Simon がプロデュース&共演していて、もう完全に Tony Hymas 時代の Jeff Beck みたいな感じを再現しているのだよ。
これをマンネリとか古いと感じるか、生涯を通じて追求し続けるに相応しい楽曲形態の一つと捉えるかで、本作の好き嫌いが決まる気がする。(僕はもちろん後者で、こういう音楽が大好物)
Tr.1 Andromeda
このところの Protocol の諸作の一曲目は、如何にもライブの幕開けナンバーに相応しいドカーンと派手な曲が多かったのだが、本作の一曲目は意外にも仄暗いピアノの響きから始める。
安定の変拍子、g と sax のユニゾンでテーマ、Simon はツーバス連打とまあいつもの音世界になっていくのだが、この Otmaro によるピアノの響きがグッとくる。
Tr.4 As The River Flows
ご存知美空ひばりの名曲のカバー・・・ではもちろんありませぬ。(川の流れのように~)
Alex Sill がアコギに持ち替え、Otmaro もピアノで応える。
ライブが楽しみな素敵な Jazz ナンバー。
この Alex Sill 君、スタンドに固定したアコギとストラップで下げたエレキを交互に弾いたり、アコギの音響をエフェクター(ディレイとかルーパーとか)で鳴らし続けながらエレキで素敵なフレーズを乗せたり、最新テクノロジーを使いこなす若手名手なので、ライブがますます楽しみだ。
Tr.6 Event Horizon
本アルバム一番の大曲。14:09の尺だ。
まずタイトルがいいね~。
SF好きならグッとくるかも。
(Event Horizon = 事象の地平線とは、ブラックホールの周囲にある光すら脱出することができなくなる境界のことで、SF作品では良くこれを突破することでワープできたりするのだよ)
曲展開はまさに Protocol 流フュージョンの王道そのもの。
後半のドラマチックな展開にはちょっと Chick Corea 的なロマンも感じる。
これは恐らくライブでの最終曲(アンコールの前)になるんじゃないかな。
Tr.7 Sundown in Old Town
前曲が血湧き肉躍る大曲だったので、アルバム最後はチルアウトな曲で。
この曲も Chick Corea 的なロマンを感じるな~。
Elektric Band とか好きで聴いていた方には本作是非オススメする!

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