The Flower Kings – Islands(2020)

Sweden の・・・と言うよりも、今や多国籍バンドとなった現代プログレシーン最重要バンド The Flower Kings(TFK) の新譜が届いたので取り急ぎレビューする。
タイトルは Islands だ。となるとどうしても King Crimson の名盤を連想するが、インタビュー等に拠ると人々の分断・隔絶がテーマであり、その象徴として「島々」を選んだとのこと。特にKCをオマージュしたわけではなさそう。
参加メンバーは、前作 Waiting for Miracles(2019) と同じ、Mirkko DeMaio(ds, perc) / Jonas Reingold(b) / Zach Kamins(kbd) / Hasse Fröberg(vo, g) / Roine Stolt(g, vo) の5名。一部の曲にゲストとして Rob Townsend(ss) とバックボーカルが加わる。

さて、本作は何と全編「リモート」で製作されたらしい。
TFKのメンバーは今や実に多国籍となり、Zach なんて米国在住だ。そしてコロナ禍により国外への移動は著しく制限されている。
一方、HDDレコーディングや Pro Tools 等のソフトウェアが普及し、製作中のマルチトラックデータそのものをネットで転送して、別の場所で演奏を加えたり編集したりすることが自由にできるようになっている。
TFKの皆さんは、というより Roine は、とても仕事熱心でコロナが落ち着くまで待ってられない。今アルバムを製作するとなれば、リモート製作は(使いこなせるアーチストにとっては)ベストな手段。
製作プロセスの詳細はわからないが、恐らくは作曲者(大半の曲はRoine)がデモトラックを録音し、それに合わせて各メンバーが演奏を加えていったのだろうと想像する。このやり方の場合、最初のデモトラックの出来が全てを左右する傾向がある。Roine は一人多重録音でソロアルバムを製作したりしてきた才人なので、さぞや完成度が高いデモトラックだったのだろうな。そのうちデモトラック集とかリリースされないかな。

本作を聴いての第一印象は、とてもリモート製作とは思えないほどの一体感があり、特に新メンバーの溶け込み具合が素晴らしいこと。
Zach Kamins が各曲の雰囲気(Atmosphere)作りに大きな貢献を果たしているのは前作同様、加えて Mirkko DeMaio の手数が増え、種々のパーカッションも駆使し、存在感が大きく増したことが嬉しい。
一方で、旧来からのメンバーである Hasse と Jonas の曲作りへの参加は少ない。それぞれ自身のソロワークや多数のサイドプロジェクトを抱えているので、TFK ではあくまでもプレーヤーに徹するという感じなのかな。

もう一つ、本作の特徴は大曲が無いこと。9分超が一曲あるが、それ以外の曲は長くても5分ちょっと。その分曲数は多く、2枚組で21曲。
複数の小曲で一つのテーマを形成する組曲形式ではなく、あくまでも独立した曲が21個だ。もしかすると、リモート製作をするうえで、その方がやりやすかったのかもしれない。5分の曲なら、一人の発想で細部まで組み立てられるが、20分の大曲となると皆で集まってアイデアを出し合って積み上げていかないと難しいだろうから。

Tr.1-1 Racing with Blinders On
Blinders は、競走馬の目のところにつける革の目隠しで、「前しか見えなくなる」効果がある。
さて、初っ端のこの曲では、Mirkko の活躍が楽しい。Congas 等のパーカッション類も駆使したカラフルなリズムセクションに仕上げている。
いつものTFKのアルバムのつもりで聞くと、曲が盛り上がってボーカルが入って、さあここからと思うところでもう曲が終わる。

Tr.1-2 From The Ground
昔ながらのTFKらしいフォーキーで暖かでドリーミーなメロディー。
Jonas のベース音が、トレブルを強調したトーンで、ちょっと Chris Squire を思い出す。

Tr.1-5 Broken
Jonas のベースのドライブ感が凄い。Roine/Jonas の共作。
6分強と決して長くはないのだが、後半曲調が目まぐるしく変化し、まるで10分超えの大曲を圧縮して詰め込んだようだ。

Tr.1-7 Journeyman
Zach が書いたインスト小品。
テクニカルでスリリングで、加えてポジティブな雰囲気。お見事。

Tr.1-8 Tangerine
ちょっとソウルフルでブルージー。印象的でかっこいい曲。(語彙力不足)
Roine/Hasse/Zach によるバックコーラスは、とてもリモートとは思えない一体ぶり。

Tr.1-9 Solaris
本作最長の大曲。それでも9分強。
イントロのオーケストレーション(Zach の仕事かな)は、まるで映画音楽のよう。
4:30あたりから、ややフリーなパートになる。3,4分の曲ではこういうのがなかなか出来ない。
5:50あたりからのブリッジを挟んで、Zach のオルガンとコーラスが天から降りてくる。多分 TFK を聴いて育った若いミュージシャンである Zach にとっての TFK らしいサウンドとはこういうのなんだろうな。発想がわかりやすいよな~とか微笑みながらも、喜んで聴いてしまう。

Tr.1-10 Heart of The Valley
フェードインしてくるパッド、ボーカル、その他キラキラ音。ドリーミーなメロディー。ハートに訴えかける歌詞。もうこれは、Roine による 「TFK の作り方」の教科書そのもの。初期の TFK が好きだった人にもお勧め。

Tr.2-1 All I Need is Love
Hasse の曲はこの1曲のみ。もうちょっと書いてくれても良いのになあ。
Hasse らしい熱い男気を感じる佳曲。

Tr.2-10 Islands
Roine によるアルバムタイトル曲で本作は終わる。
Roine がギターを弾きまくり、その調べに聞き惚れるうちに4分強の曲はあっという間に終わる。

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