僕のお気に入りの一人、オーストラリアンの技巧派ギタリスト Brett Garsed のソロ2作目。
テクニカル・フュージョン・メタル(何だかわからないジャンル名だ)界隈ではトップミュージシャンの一人だと思うが、ソロは本作含めて2作しか出しておらず、他に盟友 T.J.Helmerich との共作や Uncle Moe 等のプロジェクトものが少しあるだけで、あまり多作では無い。もっと広く世に出ても良い人だと思うんだけどね。
彼の、ギタリストとしてのプレイスタイルは少し独特で、右手はピックと指弾き(中指・薬指)を併用して高速の弦飛びフレーズを紡ぎ出す。Allan Holdsworth リスペクトなヌルヌルのレガートプレイやコード奏法も上手。かと思うとボトルネックの名手だったりもする。
そして彼の書く曲からは、どことなくオーストラリアの雄大な大地と美しい自然を感じるのだ。
さて、本作の参加メンバーだが、Brett Garsed(g) / Ric Fierabracci(b) / Gerry Pantazis(ds) / Phil Turcio(kbd) の4名が基本。皆さんオーストラリアンの凄腕揃い。加えてゲストとして、Virgil Donati(ds) と Craig Newman(b) が参加。ゲストの2名もオーストラリアンだ。
このローカル色豊かな参加メンバーからも薄々わかる通り、元々本作は Brett の自主制作盤としてリリースされたのだが、後日我が国でも日本盤がメジャーから出されたので入手しやすくなったはず。
Tr.1 Dark Matter
曲名は宇宙に満ちた謎の暗黒物質のこと。彼の書く曲の曲名には、何だか理系の匂いがするものが多い気がする。
曲調はゆったりとして、どことなく哀愁を感じる。比較的前作(Big Sky – 2002)の延長線の雰囲気。
ゲストとして Virgil Donati が参加。それほど暴れてはいない(笑)が、打音の一つ一つに力を感じる存在感抜群のドラミング。
Brett は、さすがに自身のソロだけに弾きまくり。中盤からのソロは”なめらか~”なレガートっぷり。ため息が出るような美しい仕上がり。
そして Ric のベースソロも短いけど素晴らしい。この人も超人的に上手な人。
Tr.2 Android
ちょっとSFチックな曲調。曲名はスマホのOSではなくて、本来の人造人間の意味だろうね。
ドラムは Gerry Pantazis に交代。上手いんだけど、やはり Virgil と比べると存在感というか「圧」のレベルがぐぐっと減るな。
Brett の長~いソロに続いて、Phil のとっても短いシンセソロ。もっと弾かせてやれよ・・・。
Tr.5 James Bong (License to Chill)
何だかこの人らしい寒めのジョーク曲名。書くまでも無いとは思うが、James Bond (License to Kill) をおバカっぽくしたんだね・・・。寒いね・・・。
気を取り直して聴くと、これはなかなか良い曲。まったりとした Tr.3, Tr.4 からがらっと変わって、タイトなリズムと雄大な曲調。Gerry のドラミングもなかなか迫力あってよろし。
Tr.6 Closure
Brett は、歪ませないクリアトーンのアルペジオをバックに、軽く歪ませたトーンのソロを重ねて、歌うような美しいラインを弾く。
この人はアーティキュレーションが素晴らしい。ピッキングや指弾きの細かいニュアンスの出し方、音の伸ばし方と切り方、ビブラートを始めるタイミング、これはギタリストにとって最良の教科書だな。そしてボトルネック奏法の絶妙な使い方。この人のボトルネックは業界トップレベル。
Tr.7 Poison Dwarf
この曲名には「すげえヤな奴」みたいな意味合いがあるらしいが不明。
スリリングでかっこ良い曲なので心配無用。
後半の畳み掛けるようなギターソロが凄い。
Tr.8 Be Here Now
これぞオージーサウンド。アメリカ南部のロックにも通ずる雄大でドラマチックな曲調。
この曲調にボトルネックが良く似合う。
Tr.9 Enigma
ベースがゲストの Craig Newman に交代。でもベースソロだけは Ric が弾いている。
g/bの超高速ユニゾンに続いて、雄大なテーマの呈示。アルバム最後を飾るに相応しい素晴らしい曲。しかも10分超えの大曲。
テクニカルなキメフレーズもバシバシキメて盛り上げていき、7:18頃にRic の美しいベースソロ。ここだけはゲストに任せられないね。
続いて Brett の流れるような怒涛のソロ。
最後は長く音を伸ばして消えていく。いやあ素晴らしい。
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