Robert Plant – The Principle of Moments(1983)

プログレでもメタルでもテクニカルフュージョンでも無いけど、お気に入りの1枚。
元 Led Zeppelin の・・・という紹介はご本人が嫌がりそうなので、大英帝国を代表するロックボーカリストの生き神様、人間国宝級の名人であらせられる Robert Plant 御大のソロ2作目だ。何故2作目を紹介するかというと、1作目も名作なんだけど、こっちの方が大好きだから。
ボンゾが亡くなって1980年末に Zep が解散し、御大は一度は教師になる道を目指したそうなんだけど、ソロで生きていく決断を下す。そのソロキャリアの最初を支えたのが、Genesis の Phil Collins だ。ソロ1作め、そして本作にも参加しているよ。
参加ミュージシャンは、Robert Plant(vo) / Robbie Blunt(g) / Gerald Woodroffe(syn) / Paul Martinez(b) / Phil Collins(ds) / John David(b.vo) / Ray Martinez(b.vo) といった顔ぶれ。なお2曲だけ、ドラムスを Phil Collins ではなく Barriemore Barlow が叩いている。Jethro Tull の人らしいが僕は良く知らない。
本作の音楽性を一言で言うのは難しいが、噛めば噛むほど味が出る大人のロックだ。
僕が Led Zeppelin を大好きだった理由は、彼らの音楽には聴くものの周囲の空間を異化するような強い非日常性(この世のものでは無い音)があったからなのだが、本作にもタッチは大きく異なるものの、やはり空間を異化するような不思議な作用が宿っている。暗い道を車でドライブしながら聴いたりすると効果てきめんなのだが、音楽好きな人ほどイージーリスニングできない音楽(集中して聴き込んでしまう)なので、ちょっと危ないかもね。

Tr.1 Other Arms
何やら物騒なタイトルだが、歌詞を読めば大人のラブソング。
ドラムスで参加している Phil Collins は、Brand X 等でも有名な超テクニカルドラマーだったりするが、本作ではバッキングに徹していて音数は少ない。でもやっぱり存在感あるね。
ギターの Robbie Blunt は、あまり歪ませないペナペナとした音で、昔っぽいロックのサウンド。これが実にじわじわと良い。
そして Robert のボーカルは、Zep っぽいシャウトやハイトーンは封印し、しっとりした歌い方。これがまた実にじわじわと良い。

Tr.2 In the Mood
リリース当時MTVなんかでもこの曲のPVが良く流れていたな。
不思議な浮遊感に溢れた曲。
Phil のドラミングがツボをおさえていて上手。
そしてシンセパッドと終盤のバックボーカルの盛り上げも良いね。

Tr.3 Messin’ with the Mekon
これも実に不思議な感触の曲だな。
疾走せず、ところどころ引っ掛けがあるリズム。
すかすかのシンプルなロックかと思えば、曲調が変転し、なかなか複雑な構成。作曲は、Martinez/Blunt/Plantの3名。
2:22頃、曲調が盛り上がってきて、シンセの美しいソロが挿入されるが、その後再び元に戻る。
3:43頃、b の短いソロ(と言えるのかな?)が入り、今のは何だったのだろうと不思議に感じているうちに曲が終わる。

Tr.4 Wreckless Love
ちょっと中東風な味付けの曲。Zep っぽいと言えなくもないかな。
ドラムスは Barriemore Barlow に交代。
Phil のドラミングは、少し Jazz 成分が感じられるのだが、この人は Rock ドラマーだな。ドラムサウンドの違いを聴くのも面白い。
終盤、アコーディオンみたいなシンセサウンドにリードされてフェードアウトで終わる。なかなか不思議な曲。

Tr.5 Thru’ with the Two Step
さて、不思議と言えば、この曲も不思議サウンド。
Martinez/Blunt/Plantの3名による作曲。
出だしは、オルガンみたいなシンセの厳かな伴奏をバックに Robert が静かに歌う。
そしてバンドがカットイン。ドラムスは Phil だ。ゆったりしたリズムに、存在感のあるスネアやタムの音色。
フェードアウトで終わる。

Tr.6 Horizontal Departure
本作の中では比較的ポップで、軽快なリズムの曲。
シンプルな曲調なんだけど、聴き込むと Phil のドラミングが細かいことをやっていてなかなか面白い。さすが職人だな。
曲の終わり方が、ジャジャッと全員で終わる昔ながらのやつで、意外に新鮮。

Tr.7 Stranger Here…Than Over There
本作の中ではこの曲が最も不思議な感触を覚える。
ドラムスは再び Barriemore Barlow さん。
3:20頃から、不思議世界に突入。久々に Robert 御大の “Push Push” が聴けるよ。不思議世界を抜けると、唐突に曲が終わって、いよいよラストの名曲だ。

Tr.8 Big Log
シングルヒットした名曲。
この Robbie Blunt のギターには痺れた。ちょっと Dire Straits の Mark Knopfler とか思い出す。あまり歪ませず、残響を効かせて、ちょっと演歌っぽいフレーズを聴かせる。この演歌っぽさが最重要ポイントね。
バックに鳴り続けるハンドクラップ、レイドバックした Robert の歌唱。切ない曲調。これは日本人好みでしょう。
これを聴いてハートがじ~んとしない人なんていないはず。間違いなしの名曲。

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