Sebastiaan Cornelissen – The Holdsworth Reinterpretations(2020)

昨日(2020/6/1) Bandcamp でオンラインリリースされた、できたてほやほやの最新作。
Sebastiaan Cornelissen は、オランダのバカテクドラマー。ジャンル分けするならば、テクニカルフュージョン系。同国のバカテクギタリスト Richard Hallebeek との共演も多い。そして、この二人に共通するのが、Allan Holdsworth への敬愛。その Sebastiaan が、お気に入りの Allan の楽曲ばかりを、曲毎に異なるそれぞれお気に入りのゲストミュージシャンと共演するという贅沢な作品を作ってしまった。それが本作。
内容が必然的にマニアックな作品なので、オンラインのみリリースという選択は正しいと思うが、とても高水準な仕上がりで普通に聴きやすい作品なので、どこかのレーベルから一般流通しても良いように思うのだけどね。
さて、ブローシャーの類が添付されておらず、参加ミュージシャンの詳細が不明であるが、Bandcamp の本作ページに挙げられている featuring musicians の顔ぶれはこんな感じだ。
Marc Guillermont(g), Josh Meader(g), Matteo Mancuso(g), Hadrien Feraud(b), Lalle Larsson(kbd), Frans Vollink(b), Oscar Schulze(ds), Ruud Cornelissen(b)
僕としては、お気に入りの Marc Guillermont(g) が最初と最後の曲で弾きまくってくれているので、それだけでも大満足なのだが、今回最も驚いたのが Josh Meader(g) だ。オーストラリア出身の若手のようだが、無茶苦茶上手いよ。

Tr.1 Lanyard Loop (ft. Marc Guillermont)
Allan の All Night Wrong(2002) から。ゲストは、フランスの Marc Guillermont(g) だ。この人は、大人っぽいフレージングに加えて、色気のある音色のコントロールが素晴らしい。Allan Holdsworth 的でもあり、Scott Henderson 的でもある。

Tr.2 Leave ‘m On (ft. Lalle Larsson)
この曲は、僕の知る限り Allan のアルバムには未収録だが、Gary Husband の Dirty and Beautiful Vol. 1 (2010) に収録されている。Allan 師匠が Jan Hammer(kb) と共演しているというとても珍しい組み合わせなので、そちらも是非聴いてみて。
で、本作の方は、スウェーデンのプログレキーボーダー Lalle Larsson がゲスト。アナログっぽい音色のシンセで素敵なソロを弾いている。

Tr.3 The Sixteen Men Of Tain (ft. Josh Meader)
オリジナルは師匠の同名のアルバム(1999)に収録。これも多くのアーチストに演奏される名曲だね。
曲毎のクレジットが無いので不明なのだが、バックのキーボードは Lalle Larsson かな。ベースは Frans Vollink かな。何とも素敵で贅沢なバック3名でうっとりするような演奏を繰り広げ、1:54頃から満を持して Josh Meader 登場。クリーントーンで Jazzy に弾きまくる。これは是非ライブで拝聴したいな。

Tr.4 Material Unreal (ft. Lalle Larsson)
オリジナル(Material Real)は Road Games(1983) から。
冒頭のAllan 師匠による美しいコードソロの部分を、Lalle がシンセで弾いているのがちょっと逆説的で面白い。(シンセみたいな美しいコードプレイを師匠がギターだけで弾くから凄かったわけでね・・・)
Sebastiaan が伸び伸びと音数多く叩いていて、とても楽しそうなのが伝わる。

Tr.6 Funnels (ft. Matteo Mancuso)
オリジナルは Atavachron(1986) 収録。
ゲストの Matteo Mancuso(g) も、期待の若手実力派らしい。何とピックを使わず指弾き。例えば本来は超高速スイープで弾くフレーズを、複数の右手指で寸分違わず弾きこなす。もはやどっちが凄いのか全然わからん。
コードバッキングも、ピックで弾くと各弦の発音タイミングが微妙にずれるわけだが、右手指で弾くとぴったり同じタイミングで発音するので、よりキーボード的な音色になる。
そして Matteo のソロだが、指弾きらしい多様なニュアンスを含む味わい深い音色。左手もちょっとしゃくったり、アーティキュレーションが絶妙。いやあこの人上手いわ。

Tr.8 Non Brewed Condiment (ft. Josh Meader)
オリジナルは Atavachron(1986) 収録。
ここにこの曲の動画がアップされているのでご興味ある方は是非。
冒頭の超高速テーマを、ゲストの Josh Meader(g) は顔色一つ変えずスイープで難なく弾いてしまっているよ。
このスイープ奏法ってのは、別名エコノミーピッキングとも呼ばれていて、昔ながらのオルタネイトピッキング(音符毎にピックをアップ-ダウン-アップ-ダウンと繰り返す)とは異なり、低音弦から高音弦に向かうときはずーっと連続ダウン、逆に高音弦から低音弦に向かうときはずーっと連続アップみたいに弾く。達人が弾くと、出てくる超高速フレーズに比べて、右手の動きはほとんどさぼっているように見えるのだ。
エレキギターの演奏方法って、この2-30年で確実に大進化を遂げてきた。素晴らしいと思うぞ。

Tr.11 Pud Wud (ft. Marc Guillermont)
オリジナルは Sand(1987) から。
賑やかだったオリジナルを一転させ、Marc のアコギでしっとり仕上げた。
バックはキーボードとベースのみで、Sebasiaan の ds はお休み。
あーずっと聴いていたいと思わせて、余韻を残して美しく終わる。素晴らしい作品。

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