Percy Jones – Cape Catasrophe(1990)

家族や友人からは「いつも変な音楽ばかり聴いている」と言われ続けている僕だが、まあ確かに自分でも「これは変でしょ」と思いながら聴く音楽はある。
今日取り上げるのは、超絶技巧でとても変な楽曲を弾く、元 Brand X の Percy Jones 御大の初ソロ作 Cape Catasrophe だ。
演奏者は己一人。プログラミングによるドラムとシンセに重ねて、フレットレスベースをどよよーんと弾くスタイルだ。宅録なのかな。
作曲もラストTr.8以外は全て自作。
Percy が以前所属した Brand X は、英国の Jazz Rock を代表する歴史的重要バンドだが、本作は Jazz でも Rock でも無い、じゃあ何なんだと問われると答えに窮する、何とも説明が難しい音楽(音楽が難しいのではなく、何かに例えて説明することができないのだ)が詰め込まれている。Tr.2 の導入部で、短波ラジオをチューニングするサウンドシーンが挿入されているが、まさにそういう「異国から聴こえてくる不思議な音楽」の感じ。かといって、民族楽器やエキゾチックな音階が用いられているわけではなく、鳴っている音は現代の電子楽器、しかも音がややチープ。結局、その上で唸る Percy のベースの調べが、異国的であり、非日常的なんだろうね。
フレットレスベースに興味ある方は是非聴いてみて欲しい。フレットレスベースに興味が無くても、非日常の世界にトリップしてみたい方は是非お試しあれ。

Tr.1 The Lie
いきなり電子パーカッションとベースのハーモニクスによる不思議なイントロに重なって、0:11から高らかに鳴り響くフレットレスベースの調べ。まずアルバムの最初だからオーディエンスを少し引きつけようとかそのような世俗的なことは一切考えていないのだろう。最初から全開で、Percy の謎めいた音世界に連れ込まれる。さながら迷宮都市に投げ込まれたような。

Tr.2 Cape Catastrophe
アルバムタイトル曲だ。でも本作に、アルバム名や曲名がどれほど意味を有するのかは不明。
バックで鳴り続ける金物パーカッション(サンプリング)が酩酊感を誘う。
Percy の b は、地を這うような重低音フレーズで曲の骨格を形成しつつ、ブラスのように鳴り響くハーモニクスや、高音域の不思議なパッセージや、まるで人声のような唸り音で彩りを添える。

Tr.3 Slick
前2曲に比べると、この曲は調性もしっかりあり、イントロの美しく切ない b フレーズも効果的で、比較的聴きやすいんじゃないかな。

Tr.6 Tunnels
御大は本作リリース後3年ほどして、Tunnels というバンド(プロジェクトかな)を結成するのだが、この曲名から取ったのかな。

Tr.7 Thin Lines
イントロ(曲長の1/3くらいある)のベースソロを聴いてみて欲しい。これほど多様な音が出る、これほど滑らかで美しく、時に不気味なベースソロがあっただろうか。

Tr.8 Symphony in F Major
18世紀の英国の作曲家 Thomas Arne の楽曲のようだ。
Percy のアレンジは、決して良くありがちな厳かな感じにはせず、電子音を背景にチャカポコと楽しげ。

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