Roine Stolt’s The Flower King – Manifesto of an Alchemist(2018)

本作リリースが発表されると、ついに待ちわびた The Flower Kings(TFK) の新譜登場か!と全世界が注目したが、Roine Stolt’s The Flower King 名義って、何それどういうこと?と、全世界が混乱した。
一説によると、TFKの大番頭 Tomas Bodin(kbd) の耳鳴りが悪化し、音楽活動に支障があるため、リーダー Roine Stolt はTFKの活動を休止し、The Sea Within 等の別プロジェクトをせっせと進めていたらしい。だがしかし、Roine の活動の中心はやはり TFK であり、Tomas 抜きででもやりたかったのだろうね。一応これは正式な TFK では無く Roine のソロプロジェクトであるという名目にして、Tomas にも仁義を通したうえで、本作をリリースした・・・ということなのかなと思っている。
けれども結局 2019 年になって、Tomas 抜きの新生 TFK として正式にバンド名義で新アルバムをリリースするわけだが、その新生TFKと本プロジェクトのメンバーがあまり変わらないのだよ。まあそのあたりから、何となく事情を察してあげたいところだ。
まず本作の参加メンバーだが、Roine Stolt(g, vo) / Max Lorentz(kbd, vo) / Jonas Reingold(b) / Marco Minnemann(ds) の4名が基本のチームで、曲毎にゲストとして Michael Stolt(b, vo) / Hasse Fröberg(vo) / Zach Kamins(kbd) / Nad Sylvan(vo) / Rob Townsend(sax) が参加している。
Jonas、Michael、Hasse はTFK、Nad は Agent of Mercy、Marco は The Sea Within、そして Zach は2019年の新生TFKで、それぞれ Roine とお仕事している仲間だ。
本作を一言で言ってしまうならば、TFKそのものだ。あまりにも、悲しいほど、寂しいほど、TFKそのものなのだ。じゃあ、Roine さえいれば、他に誰がいなくても、いつだって TFK ができるんじゃないかと思ってしまうほどだ。あーそうか、本作の名義にはそういう意図が込められているのかもなあ。

Tr.1 Rainsong
Max と Roine の2人だけで唄われる素敵な小品。

Tr.2 Lost America
Roineの vo と g、Jonas の b が聴こえてくれば、そりゃもう TFK だよな。
で面白いのが、ドイツのバカテクドラマー Marco Minnemann(ds) の参加だ。この人の ds は出音に存在感があり、手数も小技も多く、つい耳が持っていかれる。
4:13 頃から何だかアメリカンロック(を茶化したような)っぽい音になり、5:13 頃から後ろでうっすらと「ウーガウーガ」というバッキングコーラスが聴こえてきて、まるで Blue Swede の Hooked on a Feeling みたいな感じだ。

Tr.4 High Road
Marco(ds) と Hasse(vo) 以外の全ての音を Roine が歌って演奏している。そしてこの曲が本作中の最長曲だ。聴こえてくる音は TFK そのもの。Tomas のようなドリーミーなkbdも、Jonas のような存在感のあるどっしりした b も、全部 Roine が弾いている。TFK(バンド)の音というより、出発点となった Roine のソロ The Flower King (アルバム名)への先祖帰りかもしれない。

Tr.5 Rio Grande
この曲が今のところお気に入りだ。
Roine(g, b, kbd) + Marco(ds) に、Zach Kamins(Organ, Moog, Mellotron) がゲスト参加。
Marco のシャープで手数の多いドラミングと、ビンテージキーボードを駆使した Zach のちょっと Tomas を思わせる音世界が嬉しい。
中間部は何だかちょっと Adam & Eve(2004) の Tr.3 Babylon (Tomas Bodin作)を思い出す。川崎の Club Citta で演奏してくれたときの Tomas の悪戯っぽい顔も思い出すなあ。

Tr.7 The Alchemist
初期の TFK は、こういうジャズっぽいインスト曲も良くやっていたなあ。
Roine(g, kbd) / Marco(ds) / Jonas(b) / Rob(sax) の4名。
他の曲で Roine が弾く b も十分に上手いが、やはり Jonas の音は別格。
そしてここでも Marco 大活躍。小技を効かせた、切れ味の鋭いプレイ。

Tr.8 Baby Angels
Michael(b) と Roine(b以外全部)の兄弟2名で演奏している微笑ましい小品。

Tr.9 Six Thirty Wake-Up
Roine(g, syn) / Max(Organ) / Marco(ds) / Michael(b) / Rob(flute) の5名。
タイトルとフルートの音が、何やら爽やかな朝の風を運んでくる。
爽やかにドリーミーに、心地よく本作は終わる・・・かと思いきや・・・。

Tr.10 The Spell Of Money
Roine / Hasse / Jonas / Marco の4名。
導入部の0:40頃、スネアとオルガンをバックに Roine の g がいつもの感じのフレーズを奏でると、初期 TFK のようなドリームワールドに入るが、ボーカルが始まるとちょっとダークな今の TFK の曲調となる。聴き応えのある曲だが、最後は爽やかに終わっても良かったんじゃないかな。

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