Virgil Donati – The Dawn of Time(2016)

バカテクドラマーの Virgil Donati のソロ作品。副題に Orchestral Works とあるように、何と今作はオーケストラとの共演だ。それも全曲 Virgil が書いて、オーケストレーションも自身でやっている。ジャケット画の彼の顔にスコア(譜面)が写っているが、CD内のブックレットにもスコアの一部が写されていて、まあ壮絶の一言に尽きる。オーケストラと言っても、クレジットされた方々の人数は14名くらいなので、比較的小編成ではあるものの、各楽器の音域や特徴を知ったうえで、各パートを作っていって、全体が一つの曲になるようにする・・・って、想像を絶する世界だ。
ちょっと金が儲かると、ロックミュージシャンがオーケストラを伴奏に導入して、どどーんとやらかすのは昔から良くあることだが、そういうのはえてして聴いてつまらないことが多い。本作がとても面白いのは、Virgil がとても自然に 「 オーケストラを演奏」していることだ。もちろん14分の1名として彼はドラムを叩いているのだが、オーケストラの一員としてのVirgilとは別のところに、オーケストラ全体を神のようにコントロールしているVirgilがいて、本作はこの神のVirgilの脳内の音を、オーケストラを演奏手段として引き出しているわけだ。そのため、ギターやシンセは使ってないが、その出音は例えば In This Life(2013) なんかとも近い、Virgilらしいプログレに他ならない。
まあとにかく、比較的聴きやすく、素直にかっこいいので、ハードプログレ・フュージョン好きにはお勧め。

参加ミュージシャンについて少しだけ。Allan Holdsworthとの共演歴が長いJimmy Johnson(b) が参加している。それとオケ隊の中で有名どころとしては、Artyom Manukyan(cello) かな。この人は In This Life(2013) でも一部参加していたし、Sons of Apollo の Psychotic Symphony(2017) にも参加しているね。

Tr.1-5 が The Dawn of Time、Tr.6-9 が Concerto for Drums、Tr.11-13 が The Winds of War と、組曲形式の曲が多いこともあって、曲毎のレビューは省略するが、一言だけ書くと、最後のTr.14 Prelude No.1 は Virgil の現代音楽風ピアノソロだ。これが本格的に上手くて、ロックミュージシャンのかくし芸レベルでは無い。ほんとに才能溢れる尊敬すべきミュージシャンだ。

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