Camel – Rain Dances(1977)

僕が Canterbury Music を聴くようになった入口は、Soft Machine と Camel だった。この Rain Dances は、高校生の頃にFM放送のエアチェック番組でアルバム全曲放送されたのを録音して、毎日のように聴いていた。当時の学友やバンド仲間に Camel の良さを何とか伝えようとしたが、相手が Rock 好きなほど「やっぱさあ、ソフトロックは好きになれないんだよね~」という反応が返ってくるし、Jazz 好きな奴は「それってロックでしょ?」という更に冷たい反応。まあ、かの Allan Holdsworth 先生ご自身でさえ、ロックバンドに行けばプレイが Jazz みたいでわけわかんなーいとオーディエンスから敬遠され、ジャズ寄りのバンドに行けばロックやってんじゃねえよと評論家に叩かれ、とても辛い思いをしたらしいからね。そういうものだ。
さて、Rain Dances だが、彼らの5枚目のスタジオアルバムになる。 彼らの代名詞 Lady Fantasy を含む第2作 Mirage(1974)、全体が壮大なファンタジーとなっている第3作 The Snow Goose(1975)、名曲 Lunar Sea を含む大傑作の4作目 Moonmadness(1976) と、高品質な音楽を作り出してきた彼らが満を持して世に問うた世紀の大傑作だだだ!、と僕は思っている。
メンバーは、Andrew Latimer(g) / Peter Bardens(kbd) / Andy Ward(ds) / Richard Sinclair(b) / Mel Collins(sax) という顔ぶれ。Richard は Caravan 脱退後 Hatfield and the North を経て本作から Camel に加入した文字通り Canterbury Music のど真ん中を歩んできた b プレーヤー。Mel Collins は King Crimson をはじめとして数多くのアーチストと共演してきた偉大なプレーヤーで、本作以降はメンバーとして Camel に参加した。

Tr.1 First Light
夜明け前のようなドリーミーなイントロから Andy(ds) がカットインして疾走感あるリズムを刻み、Peter が太い音色のシンセでテーマを奏で、Andrew が同じテーマを g で変奏する。緊張感漂う間奏部を挟み、Andrew の g オーケストレーションをバックに Mel の Rock 史に残るような何とも素晴らしい sax ソロ。

Tr.3 Tell Me
ちょっと 10cc の I’m not in love にも似た、素敵なエレピとコーラスに彩られたボ-カルナンバー。この、コーラスをいっぱい重ねて深いエコーとフェーザーをかけて、ブレスの切れ目なくフワーっと鳴らす音にはあこがれた。ハードなロック好きの方々もたまにはこういうのを聴いてみて欲しい。

Tr.7 Elke
Andrew が、g 以外に p や syn や fl までも弾き、Brian Eno がその上に音を重ね、ゲストの Harp (竪琴)が奥行きを添える、今で言うアンビエントな美しい曲。Andrew Latimer は、こういう曲まで書いてしまうことができるのだなあ。底の知れない才人だと思う。

Tr.8 Skylines
前曲から曲調ががらっと変わって、疾走感溢れるインストナンバー。Andrew(g) と Peter(syn) が交互にリードする。背景のブラスがなかなか良い仕事をしている。最近の Big Big Train なんかに通じるような、英国らしい憂いと抒情に満ちた美しいサウンドの源流がここにある。

Tr.9 Rain Dances
ストリングスと、雨音のようなピチカートを背景に、Tr.1 First Light のテーマが変奏され、余韻を残してフェードアウトで終わる。本作を聴くたびに、この構成の美に、ただただため息をついてしまうのだ。

コメント