Gordian Knot – Gordian Knot(1999)

Cynic の Sean Malone (b というか Stick Player)と Sean Reinert (ds) が立ち上げたプログレバンド。
いかにも Stick 弾きらしい数学的(幾何学的)な音列が、プログレメタルを通過してきたバンドアンサンブルの上を自在に浮遊するとか貧しい語彙で適当に書いてもさっぱり雰囲気が伝わらないかも。むしろダブルトリオ King Crimson が分裂していっぱいできた ProjeKcts (Robert Fripp 曰く ProjeKcts はK.C. の R&D 部門らしい。かっこいいことを言うなあ。)に通じる印象。(実際、Trey Gunn も参加しているわけだが)
ジャケットは恐らく霧箱(原子核崩壊等の現象を可視化するためのクラシックな物理実験装置)の観測画像だろう。Gordian Knot (ゴルディアスの結び目 = 解決困難な難題の意味) → 物理・数学の理論から導かれたこの世界の美しさ(Tr.1) → 救い(Tr.6)と尊厳(Tr.10) みたいな物語を勝手に感じつつ愛聴している。

Tr.1 Galois
曲名がいきなりガロア。決闘で亡くなったあの天才数学者。ガロア体の理論は高度な暗号やITのセキュリティ等を支える基礎理論となっているわけだが、そういうことをつらつら考えながら聞くと、幾何学的な音列と奇妙な情熱のミクスチャーが如何にもそれらしい。

Tr.2 Code/Anticode
Code は音楽のコード(Chord)と発音が共通だが、一般にはコンピュータのプログラムを意味する言葉。Code と Anticode と並べれば、そこにはそこはかとなく Cyberpunk な情景が浮かんでくる。一曲目が Galois だったことや、Tr.5 が Singularity (特異点)であることを考えると、どうも全体的に Cyberpunk の匂いを感じる。

Tr.7 Komm süsser Tod, komm sel’ge
J.S.Bach を Stick ソロ用にアレンジ。短い曲だが Tr.8 の激しい始まりの前の間奏曲として重要。

Tr.8 Rivers Dancing
ちょっと Cynic に先祖返りしたような、激しく美しいプログレメタル。
このアルバムの中では最も Pop (一般受けするという意味で)な曲かもしれない。
そういえば Riverdance という有名なアイリッシュダンスパフォーマンスがあるが、Sean Malone も名前からすると Irish 系だなあ。彼の国で river dance という言葉には何か深い意味があるのだろうか。

Tr.10 Grace
Malone の Stick ソロ。まるで Stick 弾きのための教科書のようなとてもとても美しい曲。
両手タッピング(というか Stick とはそういう楽器なのだが)によるアルペジオバッキングとメロディー弾きや、抒情的なコードソロ等、この楽器の魅力を堪能できる。
なお、原盤ではこの曲がアルバムの最後に隠しトラックとして入っている模様。日本版ではそのあと更にボーナストラックが入っているが、もしかすると作者の意図が台無しになっているのかもしれず。(これ良くあるんだよね。ボーナスが嬉しい反面、アルバムの意図が台無しってやつ。)

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