Henderson, Berlin, Chambers – HBC(2012)

Scott Henderson(g), Jeff Berlin(b), Dennis Chambers(ds) の凄腕トリオによるプロジェクト。3人とも思い入れの深いプレーヤーなので、今回は曲紹介に至るまでが長いよ。

Scott Henderson は、80-90年代のFusion 期(Jean-Luc Ponty, Chick Corea Elektric Band, Tribal Tech, Zawinul Syndicate 等、並べて書くと凄いね)を経て、その後何故か Blues の深淵なる沼の底へと行ってしまったので僕はしばらく遠ざかっていたのだけど、本作では昔ながらの軽快な Jazz/Fusion に戻ってきた。アウトサイドを多用するスリリングなフレージングが有名だが、繊細な音色のコントロール(アーティキュレーション)が実に上手い巧者。

Jeff Berlin は、古くは Bill Bruford の一連のソロ作や Allan Holdsworth の Road Games 等のどちらかというとプログレ方面で有名になった人だが、80年代半ばのPassportレーベルで良質な Jazz/Fusion の作品を多数残し、その後もコンスタントにソロ作を出している。日本では渡辺香津美、Bill Bruford と組んだSpice Of Life あたりが有名か。この人のベースアルペジオソロは実に名人芸で、Champion(1985) での Dixie とか、当時来日するたびに弾いてくれていた。

Dennis Chambersは、他の2名よりも Jazz 寄りの人で、80年代に John Scofield の作品で有名に。Blue Matter(1986) の Tr.2 Trim あたりを聞いてそのパワフルかつ手数が多いドラミングにぶったまげた若者は多いだろう。そう言えば Elektric Band の強烈な1作目も 1986 年で、Tr.2 の Rumble あたりを聞いてDave Weckl の千手観音のような、しかもトリガーを駆使した斬新なプレイにぶったまげた若者も多いはず。この年はフュージョンドラムに関しては豊作だったんだね。なお、近年の彼はロックミュージシャンとの仕事も多い。Greg Howe とやった Extraction は名作だ。

Tr.1 Actual Proof
オリジナルは Herbie Hancock の Thrust(1974) から。ファンキーな定番曲。3人とも手数・音数が多く、高密度な演奏。ジャムっぽい演奏なんだが、細部を聞くとフレーズの合わせ方とか尋常じゃない。

Tr.2 Mysterious Traveller
オリジナルは Weather Report の1974年の同名アルバム。元はWayne Shorter のサックスと Joe Zawinul のエレピで進行するミステリアスというかSFチックなパートを、 Scott Henderson が Wharmy pedal とか駆使して現代的に弾きまくる。Scott 君は Zawinul Syndicate で御大と一緒にお仕事した人なので、まあ大概のことは許されるだろうね。

Tr.8 Threedom
Weather 一派のスタンダード曲がずっと続いた後、3人の共作を挟んで Jeff Berlin のbソロ。いやほんとに上手い。

Tr.9 Stratus
Billy Cobham の代表的ナンバー。この曲も多くのプレーヤーに演奏されてるね。Jeff Beck のが有名かな。PSMS – Portnoy, Sheehan, MacAlpine, Sherinian もやってる。Tr.1なんかもそうなんだけど、各楽器のソロパートを、全員参加のキメフレーズで繋ぐというのが、ジャムセッション的には合わせやすい(あんまり事前練習してこなくても何とかなる)ので、バンドの定番曲になりやすい。まあこの人たちのレベルになると、事前練習なんてしてくるわけはないので、いきなりスタジオに入ってちょこちょこと打ち合わせただけでこのくらいはやってしまうんだろうな。いやほんと皆上手いね。

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